韓国の加藤清正像

・計画は白紙撤回か
韓国の加藤清正像の建設はどうやら白紙撤回のようです。20日、蔚山市中央部にある鶴城公園に、加藤清正像とともに、清正が戦った朝鮮将軍の権慄(ごんりつ)像、明国将軍の楊鎬(ようこう)像を建設する案があることがわかりました。蔚山中区区役所が計画していた案です。
清正ら三人の将は1597年の慶長の役において、現地の蔚山城で戦いました。この蔚山城の跡が鶴城公園で、当時の戦いを再現するため、三人の将の像を建設する計画でした。
この計画に対し、蔚山中区区役所のホームページや電話に、批判の声が殺到しました。民主党蔚山市党も計画を非難し、「鶴城公園は加藤清正に殺された多くの朝鮮人の怨念がこもっている歴史的現場であり、清正像の設置は市民感情からも許されない」という内容の声明を発表しました。
これらの批判を受け、「蔚山中区区長は21日、区議会で像の建設計画を白紙撤回した」と韓国の聯合ニュースが報じています。
聯合ニュース(韓国語)
http://m.yna.co.kr/kr/contents/?cid=AKR20171221146600057&mobile

 

・たとえ清正像が苦しむ姿であっても
銅像について、朝鮮の権慄と明国将軍の楊鎬は騎馬像で、城を攻める姿であるのに対し、清正像は「城内で孤立し水と食糧不足に苦しむ姿」にする計画でした。10億ウォン(約1億508万円)の予算を投じて、像を建設し、周辺環境を整備し、観光客を呼び込もうとするプロジェクトだったようです。プロジェクト名は「鶴城ルネサンス都市景観造成事業」です。
像の建設計画が頓挫したことは、残念なことだと思います。実に惜しいです。たとえ、清正像が苦しむ姿であったとしても。
朝鮮の権慄と中国の楊鎬は文禄・慶長の役(いわゆる秀吉の朝鮮出兵)で大失態を犯した将軍です。両将軍は文禄・慶長の役で、元帥として中心的な役割を担ったにも関わらず、その失態があまりにも大きかったためか、韓国では、あまり大きく扱われません。代わりに、少々功績のあった李舜臣(りしゅんしん)の銅像を各地に建て、李舜臣を過大評価して前面に押し出してきました。
しかし、この度、蔚山で権慄と楊鎬の像が建てられれば、否が応でも、当時の朝鮮・中国連合軍のズサンさが表に出ざるを得ないだろうと思い、歴史を再検証するにはよい機会になるのではと、にわかに期待しましたが、実現しないということです。残念でなりません。

 

・馬の血を飲んで
権慄(ごんりつ)は日本軍の侵攻に対し、常に戦わずして逃げまどい、明軍をあてにするのみでした。部下が攻勢に出ないからといって、むち打ちの刑に処し、無理やり、前線に送り、部隊を潰滅させています。楊鎬(ようこう)は加藤に大敗したにも関わらず、勝利したとウソの報告を朝廷に送る奸臣で、明王朝の末期症状を象徴するトンデモ指揮官でした。
今のようなネット時代ならば、誰でもすぐにその事実に気付くでしょう。歴史粉飾に踊されて、「権慄は英雄だった」と言う人も必ずいるでしょうが。
私は昨年の11月、この蔚山城跡の鶴城公園に訪れました。そこは小高い丘になっており、丘の上に、かつて城が築かれていました。丘を明・朝鮮連合軍5万7000がグルリと囲み、加藤らは水源を絶たれてしまいます。南に太和江(てわがん)が流れていますが、川に近付こうと城を出た兵は殺されました。加藤らは馬を殺し、その血を飲んで渇きと飢えをしのぎました。
籠城して10日後、ようやく毛利秀元黒田長政の援軍が駆け付け、加藤らは士気を取り戻し、明・朝鮮連合軍を散々に蹴散らします。毛利軍と加藤軍に挟み撃ちにされて、逃げまどう明・朝鮮連合軍は次々と討ち取られ、死屍累々となりました。

 

・崩れた城壁
蔚山城跡は日本VS中国・朝鮮の国際戦争の戦場跡です。この近世の大戦争があった地を観光資源として活用しようとするのは当然でしょう。
現在、城は跡形もありませんが、城壁が随所にかなり残っています。鶴城公園は「地方文化財」に指定されていますが、国の重要文化財ではないため、保存維持の予算はほとんどつきません。城壁は崩れたままで、修復もされず、土や草に埋もれ、劣悪な状態に晒されています。文化財の調査をしたという形跡すらありません。全体に寂れ果てていて、訪れる人はほとんどいません。
「地方文化財」の指定を外し、城壁取り壊して、再開発しろという声もあります。それでも、現地の市民有志が草ひきや土払いなどをして、なんとか城壁の形だけはとどめています。
銅像を建てる10億ウォンのカネがあるならば、城壁の修復維持に使って頂きたいものです。そして、できれば、像も建てて頂きたい。権慄と楊鎬の敗将の像を。

 

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蔚山市中央部にある鶴城公園、今にも崩れ落ちそうな城壁(著書撮影)

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