綸言(りんげん)汗の如し

法律の運用で、「外形上」という言葉がよく使われる。甲の行為が何らかの属性を帯びているということが、乙に対し、「外形上」明らかである場合、甲は乙に対して、その属性において、法的責任を負う。簡単に言えば、甲は脅迫をしていないと言い張ったとしても、乙が甲の行為を脅迫と捉えるに充分な状況・要件が「外形上」揃っていれば、脅迫は成立する。

籠池氏にファックスを送った谷氏は経産省の職員で総理夫人付きである。ファックス文面には、この谷氏の問い合わせによって、財務省国有財産審理室長田村氏が回答をした旨が記されている。

財務省国有財産審理室長なる者が本来、一幼稚園の理事長に、回答などはしない。当然、首相夫人付きの谷氏の問い合わせによって、財務省は回答をしたのだ。「首相夫人付きの問い合わせには、首相夫人の意向がある」と財務省は判断した。もちろん、これは「外形上」、財務省がそのように判断したのである。

ファックス文面末尾には、「工事費の建て替え払いの予算化について、平成27年度予算措置はできなかったため、平成28年度予算措置で行うことを検討中」といったことが記されている。かなり、土地の扱いについて、具体的で踏み込んだ内容を記している。

谷氏の存在や谷氏のファックスにより、首相夫人の存在が財務省に「外形上」認識されて、首相夫人の名で物事が動いたように見える。安倍首相夫人がいくら、「自分は関わっていない」と主張しても、法学理的に見れば、それは通用しない。首相夫人付きの谷氏が財務省に問い合わせをしたという事実は、財務省に「首相夫人が関わっている」と捉えさせるのに「外形上」、充分な要件となっているからだ。
 
さらには、首相夫人の背後に当然、首相の存在があると捉える「外形上」の認識が連座していく。このような連座の循環こそが「忖度(そんたく)」の構造を生み出していると言える。


綸言(りんげん)汗の如し
       「漢書」劉向伝より

天子の言葉は、出た汗が体内に戻らないように、一度口から出れば取り消すことができない、という意味である。

安倍首相は「私や妻が関係しているなら、総理大臣も国会議員も辞める」と発言している。首相は自らの「綸言」に対し、どのように説明をするのだろうか?

石破茂氏は籠池氏証人喚問後、「世の中の人は何が何だかわからない。そういう思いを自民党としては共有しなければならない。」と発言した。その通りだ。何とかしなければいけない。

 

f:id:uyamatakuei:20170505205627j:plain

漢書(宋刻本)

広告を非表示にする