メイ首相はサッチャーになれないのか

最近、メイ首相はサッチャーに話し方が似てきた。断定口調が往年の「鉄の女」にそっくりだ。
メイ首相は8日の解散総選挙で大勝し、サッチャーのような「強い指導力」を得ようとする目論見だったが、残念ながら、そのようにはいかないようだ。どうやら与党保守党は過半数を獲得できず、議席数を後退させる見通しだ。
なぜ、このような予想外な展開になっているのか。
メディアはその原因を以下のように報じている。

①保守党が高齢者医療費負担を引き上げる等のマニフェストを発表したこと。
マンチェスターでの自爆攻撃の一因が、メイが内相の時におこなった警察官の減少にあると批判されていること。
③コービン労働党党首が税制改革等で、カネ持ち攻撃をしていること。

これらの原因もあるだろう。しかし、与党失速の最大の原因は、「わかりにくさ」だと考える。今回の総選挙において、メイ首相や与党の立場・発言・展望について、どれも整合性が取れない。以下のような「わかりにくさ」が際立つ。

①メイ首相は元々、EU懐疑派であるが先の住民投票ではEU残留の立場を表明した。そのメイ首相が離脱強硬派に転じていること。
②保守党内でも「ハード・ブレグジット」派と「ソフト・ブレグジット」派が対立し、メイ首相はどちらに与するのか判然としない。
③メイ首相の言う「EU離脱交渉を優位に進める」というのは具体的に何を指しているのか、わからない。
④選挙で民意を得たとしても、イギリスのEUの未払い分担金の減額に応じることは、ドイツをはじめ、ない。
スコットランド国民党などの残留強硬派に対し、どのような根回しや交渉がなされているのか、わからない。
⑥EUに代わる包括的貿易交渉の枠組みがどのような形になるのか、その輪郭さえ見えない。(一方、労働等は離脱をしながらも、単一市場や関税同盟へのアクセス維持を目指す、としている)

以上の点のような「わかりにくさ」があることから、やはり、メイ首相が今回、総選挙に踏み切ったことは勇み足だったかもしれない。
サッチャーは大胆であった。メイ首相も大胆である。彼女は総選挙という大勝負に出て、そして、何よりも、この難局で首相を引き受けたのだから(ボリス・ジョンソンなどは逃げた)。
しかし、メイ首相には足りないものがある。それは「ヴィジョンを明示し、表現する力」である。サッチャーにはその力が充分に備わっていたが、メイ首相にはそれがないのである。
サッチャーは往年、「政治家の仕事は多数の意見の一致を引き出すことではなく、己の信念を打ち出すことだ」と言っている。

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マーガレット・サッチャー(Margaret Hilda Thatcher, Baroness Thatcher、1925年- 2013年)

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